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神戸地方裁判所社支部 昭和35年(ヨ)11号 決定 1960年3月01日

債権者 電機労連北条地区合同労働組合

債務者 株式会社小畑鉄工所 外一名

主文

債権者より債務者等に対する当庁昭和三五年(ワ)第二〇号会社解散決議並に清算人選任決議無効確認請求訴訟事件の判決を為すに至る迄、債務者株式会社小畑鉄工所は昭和三五年一月二九日付決議に基いて為す会社清算手続を停止しなければならない。

債務者糟谷猪三の債務者株式会社小畑鉄工所の代表清算人としての職務執行を停止する。

右職務執行停止期間中

神戸市生田区海岸通四丁目一九番地

黒田之敬

をして代表清算人の職務を執行させる。

(注、保証金三〇万円)

(裁判官 福原義晴)

【参考資料】

仮処分申請書

申請の趣旨

本案判決に至る迄

一、被申請人会社は昭和三十五年一月二十九日付決議に基いて為す会社清算手続を一時停止せねばならない

二、被申請人糟谷猪三の右被申請人会社の清算人としての職務執行を停止する

三、被申請人の代表者を仮に黒田敬之とする

との御裁判を求める

申請の理由

一、申請人は別紙写の通り解散決議等の無効確認の訴を提起したところ、このまま解散手続を進められては申請人組合の組合員等が別に提起している不当解雇無効確認及これにともなう給料支払請求等についても遂にその目的達成の道をも失う仕末となり(不可能に近い困難におちいる)結局は申請人の団結権につきつぐなう事の出来ない危害を受ける事になるので取り敢えず本申請に及んだのである。

なほ被申請人会社の解散決議等が専ら組合の抹殺を目的としてなされたものであると見られる事情は

イ、組合は昭和三十三年十二月五日に結成されたのであるが、同年十二月二日内密に組合結成運動をしていた事がばれて朝会において社長は「君等が組合を結成するのなら直ちに工場を閉める」と云うた。

同年十二月八日午後十一時頃より翌日の五時頃迄被申請人側の小林、玉田、若宮、浅野、田中春治、田中忠明、河合義博、岩井、小田、山田、柏木の十一名が五組に分れて各組合員の家を戸別訪問して組合を切崩しに努力した。表面は第二組合結成の為と云うことであった。

昭和三十四年春季賃上斗争の際、四月五日の団体交渉の席上、社長は

「これで気に入らんのならば工場を閉める」

と云うた。

同年夏季一時金要求の時六月二十四日第一回団体交渉を始めて三分もせぬ中に社長は、

「これで気に入らんのなら他へ行つて呉れ、わしもこれ以上工場を経営する気はないから、ビールでも飲んでサヨナラや、ホタルの光でも歌つてなあ」

と云うた。

ロ、被申請人会社の従業員中労働組合え加入していない者約二十人(工場長をも含めて)居るが昭和三十五年一月四日、五日この二十人程の者達が城崎温泉に会合して何か話し合うところがあつたが、六日の初出の日には非組合員達は一寸来、七日には被申請人会社の都合により臨時休業と発表され八日には解雇の云い渡しを受けたその理由として発表されたのは、非組合員達が

「どうも組合の人達と合はないから働きにくい、残念ながら辞職さしてもらいます」

と云うて全員辞職願を出して来た、これでは会社は到底経営できないし社長としても意欲を失つたから今回会社を解散する、ついては全従業員を解雇すると云うのである。

非組合員の解雇従業員約十二、三人の者は被申請人会社の社長の姉婿の工場、及び社長の友人の工場へ働きに行つている、そしてその人達の間には組合を壊滅せしめたら亦工場を再開するのだと云うような言動をなしている者もある。

このような各般の事情を総合すると、本件解散決議は組合をブツツブそうとしているものであると云はねばならない。

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